

東京理科大学薬学部卒業後、修士課程に進学し、東京理科大学大学院薬学研究科修士課程を修了。その後、博士課程に進学し、東京大学大学院薬学研究科博士後期課程を修了。大学院在学時に、物件を探し薬局を創業し、2016年にケーファーマシー株式会社を設立後、代表取締役に就任。
ノロウイルスは、急性胃腸炎を引き起こすウイルスとして広く知られています。冬の時期に流行しやすいことから「冬の胃腸炎」とも呼ばれることがあります。非常に感染力が強いため、家庭や学校、施設などでの集団感染が問題となることが多いです。本記事では、ノロウイルスの症状、感染経路、予防方法、治療について、そして感染した場合の処理方法について詳しく解説します。
▶▶ノロウイルスとは?
ノロウイルスは、ウイルス科に属するRNAウイルスで、人間に感染する主な原因として知られています。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染する可能性があるため、注意が必要です。また、感染した人から他の人への感染を引き起こすリスクが高いことが特徴です。
▶▶ノロウイルスの症状は?
ノロウイルスに感染すると、主に以下の症状が現れます!!

- 下痢 ノロウイルスによる下痢は、急に始まり、頻繁に水様便が出ることが特徴です。お腹がゴロゴロ鳴ったり、腹痛を伴うこともあります。下痢がひどくなると、脱水症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。
- 嘔吐 嘔吐は、ノロウイルス感染の初期症状として多く見られます。食後すぐに吐き気を感じ、すぐに嘔吐することが特徴です。嘔吐は激しく、何度も繰り返すことがあり、胃腸が非常に不安定な状態になります。
- 発熱 軽度の発熱が見られることがあります。通常、37度前後の微熱程度ですが、発熱が続く場合もあります。
- 腹痛 腹痛もノロウイルスの特徴的な症状です。胃腸が炎症を起こすことにより、腹部に不快感や鈍痛を感じることがあります。
- 全身倦怠感 ノロウイルスによる感染後は、全身に倦怠感や疲労感を感じることが一般的です。体力が低下し、日常生活が難しくなることもあります。
ノロウイルスに感染した場合、通常は2〜3日以内に症状が改善しますが、症状の重さや年齢、免疫力に応じて回復の速度には個人差があります。
▶▶ノロウイルスの感染経路
ノロウイルスは、非常に感染力が強いウイルスであり、以下のような経路で感染が広がります。

- 口からの感染 主に、ウイルスに汚染された食べ物や水を摂取することで感染します。生の魚介類や生野菜が原因となることが多く、特に衛生管理が不十分な飲食店や自宅での調理がリスクを高めます。
- 人から人への感染 感染者が嘔吐や下痢をした後、その嘔吐物や便に触れた手で食物や物を触ることで、ウイルスが広がります。また、感染者が咳やくしゃみをした際にもウイルスが飛散することがあります。
- 空気感染 嘔吐物が空気中に浮遊して、それを吸い込むことによって感染することもあります。このため、嘔吐物を処理する際は十分な対策が必要です。
- 接触感染 感染者が触れた物品(ドアノブやトイレの便座など)にウイルスが付着し、その物品に触れることで感染します。手洗いが不十分であると、こうした接触経路で感染することがあります。
▶▶ノロウイルスの予防方法
ノロウイルスの感染を予防するためには、日常的にいくつかの注意を払うことが大切です。
- 手洗いの徹底 ノロウイルスは手指を介して感染することが多いため、こまめに手を洗うことが最も重要です。特に食事前やトイレ後は、石鹸を使ってしっかりと手洗いをしましょう。
- 調理の際の衛生管理 生肉や魚介類を扱う際は、十分に加熱することが重要です。また、調理器具や食器の洗浄を徹底し、汚染を防ぎましょう。
- 感染者との接触を避ける ノロウイルスに感染した人と接触しないように心掛け、感染者がいる場合は、家庭内での隔離や、公共の場でのマスク着用などの対策が必要です。
- 環境の消毒 ウイルスは表面に長時間残ることがあるため、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)を使って、ウイルスを不活化することが有効です。
▶▶ノロウイルスに感染した場合の処理方法
万が一、ノロウイルスに感染してしまった場合、以下の処理方法を実践することが推奨されます。
- 水分補給 下痢や嘔吐によって体内の水分が失われるため、適切な水分補給が必要です。電解質を含んだ経口補水液を摂取することが重要で、特に子供や高齢者では脱水症状を避けるためにこまめに水分を取るようにしましょう。
- 食事を控える 嘔吐や下痢が収まるまでは、消化の良いものを少量ずつ摂取するようにします。食べ物は避け、無理に食べることは避けましょう。
- 安静にする ノロウイルスに感染すると全身倦怠感を感じるため、安静にして体力を回復させることが大切です。過度の運動や活動を避け、できるだけ休養をとりましょう。
- 清潔を保つ 感染拡大を防ぐため、吐瀉物や便が出た場合は、手袋を着用して処理し、その後は必ず手を洗うようにします。また、吐瀉物を含む汚れたシーツやタオルは、熱湯で洗うか、消毒剤を使用して清潔に保ちましょう。
- 医師に相談 体調が悪化する前に、特に高齢者や免疫力が低い人は早期に医師に相談することが大切です。医師の指示に従って、適切な処置を受けましょう。
▶▶ノロウイルスの治療法
ノロウイルスに特効薬はないため、治療は主に症状の緩和を目的とした対症療法が中心となります。治療法は以下のように分けられます。
1. 水分補給と電解質の補充
ノロウイルス感染時には嘔吐や下痢が頻繁に起こり、体内の水分や電解質が急激に失われます。これにより脱水症状を引き起こす可能性があるため、まずは水分補給が非常に重要です。
経口補水液(ORS)
市販の経口補水液を使用することが推奨されます。経口補水液は、体内の水分とともに必要なナトリウムやカリウムなどの電解質を補充することができ、脱水症状を防ぐ効果があります。水分補給は少しずつ、頻繁に行うことがポイントです。
水分補給の方法
嘔吐がひどくて水分を摂ることが難しい場合は、少量ずつ、頻繁に水分を摂るようにしましょう。例えば、1口ずつ、5分おきに水分を摂ることが効果的です。無理に一度に大量の水を飲むことは避けましょう。
2. 安静と休養
ノロウイルスに感染すると、体力が消耗し、倦怠感や脱力感が強くなります。そのため、感染した場合は、できるだけ安静にして体を休めることが重要です。特に高齢者や子供では体力の回復が遅れることがあるため、十分な休養を取ることが必要です。
3. 食事の管理
ノロウイルスに感染した場合、嘔吐や下痢の症状があるため、食欲が低下することが一般的です。しかし、症状が少し落ち着いてきたら、無理に食事を摂るのではなく、消化の良いものから少しずつ食べるようにしましょう。
回復期の食事
嘔吐や下痢が治まった後は、胃腸に優しい食事を少量ずつ摂取します。例えば、おかゆやスープ、うどんなどの消化に優しい食べ物が適しています。また、脂っこい食べ物や刺激物、アルコールなどは避けるべきです。
4. 症状を和らげる薬の使用
ノロウイルスには特効薬がないため、症状を和らげる薬を使用することが一般的です。ただし、薬の使用は必ず医師の指示を受けてから行うことが重要です。
制吐薬(吐き気を抑える薬)
嘔吐がひどい場合、制吐薬(吐き気止め)を処方してもらうことがあります。しかし、自己判断で使用するのは避け、必ず医師の指導を仰ぐようにしましょう。
鎮痛薬
腹痛がひどい場合は、鎮痛薬を使うことがありますが、腸に負担をかけないような薬を選ぶ必要があります。市販薬でも効果が期待できるものがありますが、事前に医師と相談することが望ましいです。
※下痢止めは体内にウイルスをとどめてより悪化させる可能性もあるため、通常ノロウイルスの場合は使いません。医師によく相談するようにしましょう。
5. 抗生物質の使用について
ノロウイルスはウイルス感染による胃腸炎なので、抗生物質は効果がありません。抗生物質は細菌による感染症に対して使用されるため、ノロウイルス感染症には意味がないことを理解しておく必要があります。
▶▶ノロウイルスの重症化と対応
通常、ノロウイルスによる症状は軽度から中等度で回復しますが、以下のような状況では重症化することがあります。
高齢者や免疫力の低下している人
高齢者や免疫力が低下している人は、ノロウイルスによる脱水症状や他の合併症が起こるリスクが高いため、注意が必要です。
脱水症状がひどい場合
脱水症状が進行すると、口渇、頻尿の減少、皮膚の乾燥、血圧の低下、意識障害などの症状が現れることがあります。これらの症状が見られた場合は、速やかに医師の診察を受け、点滴などの治療が必要になることがあります。
▶▶まとめ
ノロウイルスには特効薬がなく、治療は主に対症療法を中心に行います。最も重要なのは水分補給で、経口補水液を使って脱水症状を防ぐことが必要です。また、安静にし、消化に良い食事を少量ずつ摂取し、症状がひどくなった場合は医師の指示に従い、必要な薬を使用します。感染者は他の人への感染を防ぐために十分な衛生管理を行い、無理に食事を摂ることなく体力を回復させることが大切です。